岐阜市の児玉将治税理士事務所がお伝えする国外転出する場合の譲渡所得等の特例についての解説です。

国外転出する場合の譲渡所得等の特例

国外転出する場合の譲渡所得等の特例(出国税)

 

平成27年度税制改正において、「海外転出をする場合の譲渡所得等の特例」(通称、出国税)が創設されました。
これにより、海外転出する際に1億円以上の有価証券等を持っている場合は確定申告等の手続きが必要となりました。また、国外に住んでいる親族などへ有価証券等の贈与などを行う場合も同様な手続きが必要です。

 

目次

  • なぜ出国税の制度が創設されたのか?
  • 制度の特徴
  • 対象者及び対象資産
  • 申告期限
  • 納税猶予
  • まとめ

なぜ出国税の制度が創設されたのか?

海外転出をする場合の譲渡所得等の特例ができた背景には、有価証券等の譲渡益は譲渡した国での納税となるので、海外において譲渡した場合日本の税収にならないという理由が一つです。
また、税金のかからない国や地域、例えばシンガポールや香港では、株式等を売却しても税金は掛かりません。それを狙った「税逃れ」を避けるためというのがもう一つの理由です。

 

制度の特徴

この特例の特徴は、まだ確定していない利益を計上することです。まだ売却していないので実際に利益は確定していないのに、利益があったものとみなして申告、納税します。これは個人において今までにない課税の仕方です。しかし、すでに日本以外の先進諸国、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、イタリア、カナダにおいてはこれと同じような法律をすでに制定しています。そこで、日本もそれに倣ったのです。

 

対象者及び対象資産

この制度の対象者となる人は、次の両方に該当する人です。

  • 一億円以上の対象資産を持っていること
  • 国外転出する日の前に10年以内の間に日本に5年を超えて住んでいること

 

対象となる資産には次のものが該当します。

  • 有価証券(株式、投資信託等)
  • 匿名組合契約の出資持分
  • 未決済の信用取引等
  • 未決済デリバティブ取引

 

申告期限

国外転出する場合の譲渡所得等の特例

(国税庁資料より)

 

この制度の対象になった人は申告をしなければいけませんが、納税管理人の届け出をした場合としなかった場合でやり方が違います。
納税管理人とは、海外転出した人の納税に関することを代理で行う者を言います。納税管理人には誰でもなれますが、臨機応変に対処しなければならない場合もあるので、税理士に依頼するのがベストです。

  • 国外転出までに納税管理人の届け出がない場合

    国外転出予定日から起算して3カ月前の価額で対象資産の譲渡等があったものとみなし、国外転出までに申告、税の納付をします。 

  • 国外転出までに納税管理人の届け出をした場合

    国外転出時の価額で対象資産の譲渡があったものとみなし、翌年の確定申告期限までに申告します。

 

納税猶予

納税管理人の届け出をした上で担保の提供があった場合は納税猶予の適用があります。担保の提供がなかった場合は、確定申告期限までに納付をします。

 

担保となる資産は、納税猶予の所得税額、猶予期間中の利子税額に見合うだけのものが必要です。これにより国外転出から5年間は納税が猶予されます。さらに海外居住を続ける場合は、納税猶予期間の延長の届け出をすることにより、5年間納税猶予期間が延長されます。

 

納税猶予制度の適用を受ける場合には、次のような減額措置の適用を受けることができます。

  1. 国外転出後に対象資産の価額が国外転出時よりも下がってしまった場合

    譲渡等の日から4カ月を経過する日までに更正の請求をすることにより、国外転出時に課税された税額を減額できます。

  2.  

  3. 転出先の国の外国所得税と二重課税されてしまう場合

    外国所得税を納付することになる日から4カ月を経過する日までに更正の請求をすることにより、外国税額控除の適用を受けることができます。

  4.  

  5. 納税猶予期間内に帰国した場合。納税猶予の適用を受けずに5年以内に帰国した場合

    帰国した日から4カ月を経過する日までに更正の請求をすることにより、引き続き持っている対象資産について国外転出時に課税された税額を取り消すことができます。

  6.  

  7. 納税猶予期間が満了した場合

    納税猶予期間満了の日から起算して4カ月を経過する日までに更正の請求をすることにより、引き続き所有している対象資産について対象資産の価額が下落しているときは国外転出時に課税された税額を減額できます。

 

まとめ

富裕層の課税逃れの捕捉を狙った制度のため庶民にはあまり縁のない話と思われるかもしれませんが、手持ちの株式が高騰して1億円を超える日が来ないとも限りません。そんな日がやって来るのを楽しみにして、この特例を頭の片隅に入れておいてくださいね。

 

(最終更新年月日:2017年3月18日)

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